以前買った『標準ラテン語文法』(中山恒夫著、白水社)で久々に勉強。
『標準ラテン語文法』p.11 に「Ridere non licet.」という和訳問題がある。初っ端からいきなり非人称動詞が出てくるのも面白い。
以前、放送大学に「ラテン語の世界」という講義があった頃、「Quod licet Iovi, non licet bovi.」という例文と「ユッピテルに許されていることが、牛に許されているとは限らない」という訳例が提示されていた。近代に作られた慣用句で「俺とお前では格が違う」という意味らしい。
それを踏まえると「Ridere non licet.」は「笑うことが許されているとは限らない」になりそうだが、どこか不自然な内容である。「笑うことは許されていない」の方が自然な気がする。先の「―non licet Iovi.」然り、二通りの解釈が可能なのかも知れない。
『標準ラテン語文法』5 章の和訳文にこんなのがあった。以下、マクロンは省略。
Britannorum mores, instituta, leges novi.
付属の単語集には Britannia に「ブリタンニア、イギリス」という定義が、Britanni に「ブリタンニア人」という定義が載っている。この本の和訳・羅訳問題、この単語集を引きながら作文するのを前提に作られているから Britannorum は普通に「ブリタンニア人の」と訳して然るべきだろう。
そして、この本自体古典古代のラテン語を学ぶのが主目的で、中世やルネサンス期、カトリック界隈、況してや欧州の学閥の連中が書いたり喋ったりするラテン語は二の次三の次のようだから(それがよいのかはともかく)、この「ブリタンニア人」はアングロサクソン人ではなくケルト人のこと……で、いいだろうか。
全体を訳せば「ブリタンニア人の習慣、風習、法律を私は知っている」でいいだろう。novi は nosco「知る」の完了相だが、前者は「知っている」の意味であって「知っていたが今は忘れた」の意味ではないようだ。